第4話・『蠢動』

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. おもむろに開いた扉から、不用意に覗いた眼鏡面に対し、 わたしは瞬間的に、前かがみになって喚いた。 「ちょっとお父さんっ! わたし入ってんだから、開けないでよっ!」 お父さんは「ぉおっ!?」と仰け反りながら、慌てて風呂場の扉を閉める。 でも何かまだ腑に落ちない様子で、そこに突っ立っているのがガラス戸越しに見えていた。 「…風呂? なんだ亜美、なんで珍しくこんな朝っぱらから風呂なんか入ってんだ?」 「ゆうべ凄い寝汗かいたからシャワー浴びてるのっ! ベトベトのままじゃ学校行けないでしょっ!」 「おぉっ、そうか、学校行くのか! そうだな、いつまでも悲しんでるだけじゃあ、前に進め…」 「もうっ、いいから早くあっち行ってよっ!」 「お…おう」とか言いながらすごすご退散したお父さんを確認し、 わたしは気を取り直すように、熱いシャワーを頭から浴びた。 それにしても、 怖い夢を見たものだ。 水流に目を閉じれば、夢の中の森や小屋が、まだはっきりと脳裏に浮かぶ。 夢って潜在意識によって作られるものだから、 きっとわたしの頭には、ああいうおどろおどろしいイメージが媚びついてしまってるんだろう。 無理もない。 あれからずっと、気がついたら、いつの間にか考えてしまっているんだ。 アバターの顔が歪む現象のこと。 紗耶の最後のメッセージのこと。 そして、星影レイミのこと。 それらの怪奇めいた事柄を、なんとか科学的根拠に当てはめようとするけれど、 今のわたしには、まだまだ情報が足りないみたい。 不確かな想定に震えて過ごすよりも、今は早く通常の生活に復帰すること。 紗耶の自殺のショックからは、そう簡単に立ち直れそうにないけど、 いつまでもこうしてたって、紗耶が帰って来るわけじゃない。 少しずつ、そう思えていた。 ──それにしても、 リアルな夢だったと思う。 森の土を踏む弾力が、なんとなく、まだこの足に残っている気がする。 .
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