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わたしは初め、紗耶の自殺は青い髪の男によるものと信じて疑わなかった。
でも警察が言うには、彼女は肉体的暴力などいっさいふるわれていないという。
それならば何か精神的な暴力だろうとあの時は思ったけど……
よくよく冷静に考えて見れば、あの紗耶がそんなもので、自分の命を絶つまでに追い込まれるとも思えない。
「ねぇ梅田さん、幽霊とか怨念って信じる?」
「な、なに急に?」
「俺ね…一度だけ見たことあるんだ、幽霊。
窓の外からね、入院してるはずのお爺ちゃんが僕をじっと見ててね。
後から知ったんだけど、その時にはもう、お爺ちゃん病院で亡くなってたんだって…
俺に最後のお別れを言いたくて、出てきたのかな…って」
「…何が言いたいの佐倉くん?」
「うんと…だからね……
もしかしたら本当に、『どりんくば~』には星影レイミの怨念が住み着いてる可能性もあるかも…って思うんだ。
だからこれ以上は……」
幽霊が実在するか否か──
霊感とは縁のなかったわたしに、そんなことはわからない。
けれども、もし本当に幽霊や霊魂が実際に存在するんだとしたら…
「紗耶は……どうなるの?」
「…え?」
「自殺者の霊は、成仏出来ずにこの世をさ迷い続けてるって、なんかのテレビで霊能者が言ってた」
「……それは」
「自殺した紗耶の悲痛な想いは、いったい誰が聞いてあげるの?
わたし……紗耶にいろんな悩みを打ち明けてた。
紗耶はちっぽけな相談でも、いちいち親身になって聞いてくれてた…」
…ダメだ…また涙がこみ上げてくる……
「なのに……紗耶の悩みを、わたしは聞いてあげることもできないの?
親友が今、すごく苦しんでるかもしれないのに…
わたしにそれを無視しろって言うのっ!?」
つい大きくなってしまった声は、静かな図書室に思いのほか響いてしまった。
一斉にこちらを向く図書室の面々から、慌てて涙を隠すように後ろを向く。
窓の外のグラウンドでは、活き活きとサッカー遊びに興じる男子達が見えていた。
視点を少し手前にズラせば、ガラスに映る佐倉くんの困り顔。
端から見れば、痴話喧嘩でカノジョを泣かせた、酷いカレシ……
……には見えないほど、佐倉くん自身、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
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