僕色に染まれ 第1話

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翌日の授業中、僕は教室の女子1人1人の顔を見ていた…… 「僕色……僕色……」 僕色に染める……なぜか昨日の良太の言葉が頭から離れない。 右隣の島澤桃子さん…… 右斜め前の立石香さん…… その前の…… 顔は見えない。背中だけ…… 「真城さん……」 真城結衣(ましろ・ゆい)…… 我が校のアイドル的存在で生徒会長…… 剣道部の主将でスポーツ万能。 プールを泳げば、水泳部の女子よりも速く泳ぎ…… トラックを走らせれば陸上部の女子よりも速い…… 更に勉強も出来て、成績はいつも学年でベスト5に入るくらいだった。 それでいて…… 「あ!」 「!?」 いきなり真城さんが声をあげたので、思わずビクッとしてしまう僕…… 「どうした?真城」 先生が真城さんに聞くと、真城さんは「なんでもない」と笑って答えていた。 真城さんのポニーテールが左右に揺れていた。 コロコロ…… 「ん?」 それは僕の足の先に当たって止まった。 「なんだ?これ?」 僕はそれを拾いあげる。 「消しゴム?」 表面のパッケージに『おみくじ消しゴム』と書かれていた。 6面に丸角張った消しゴムでコロコロと机の上に転がす。 止まったら、パッケージから消しゴムを抜いてみると、そこに今日の運勢が書かれている……と言う、言わば子供騙しの消しゴムだ。 「懐かしい~僕も小学生の時持ってたよ~」 つぶやきながら、消しゴムを机の上に転がしてみる。
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