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いつも窓の中にいた。 おかえりって言うのが私の役目だった。 それは、毎日。 遅くなるのかな、事故とかしてないかなって 雨の日も雪の日も晴れの日も春の日も夏の日も 窓から覗いては小さくため息をついた。 今思えば、明かりの点いた部屋に帰ることなど無かったね。 それが悪いことでは決してない。 ただ、明かりの点いたこの家の窓の外など見たことがない。 きっと明るくて調度よく冷えた体を温めてくれる温かい部屋。 でも、私にはそれがわからない。 多分、窓の外を見る度、目に見えないぐらいの小さな黒いものが 少しずつ毎日降っていた。 それがいつのまにかとてつもなくおおきくなって 私は、一人を選んだ。 あんなに不安で仕方なかった窓の外の景色も なぜか途端にどうでもよくなった。 見ることもなくなった。 でも、それも、悪いことでは決してない。 そんなもんなんだよね。
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