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夜中に目が覚める。 雨の音が聞こえる。 思い出す。 あの人が恋しくて見上げた空の悲しさを。 今頃誰の隣で、どんな風に、暖かい家で何も知らない顔して寝てるのかなって。 あの頃は眠れなかったね。 真っ暗な空だった。 綺麗なのに淋しくて灯りの消えた家が並ぶ住宅街からいつも目を反らしていたね でもね。 今、私も灯りの消えた家に中で何も知らない顔して眠った。 こうして偶然にも目が覚めたときや、ふとした一瞬は、一人の、一人だった時の私だけの私に戻る。 偽りの自分を演じているわけじゃない。 そうじゃなくて。 満たされずもがいて泣いて そんなあの頃の幼くて無知で可哀相な私が顔を覗ける。 それはあまりにも突然に。 今が幸せすぎるんだよ。 一緒に感じればいいのに、「あの頃」に一人、置いてきてしまった。 どうすることもできない。 迎えに行くことも、殺すことも、忘れることも。 すぐ隣から聞こえる寝息に目をやると いつもの大きな背中があった。 この、「いつもの」というのはとても重要だと思う。 明日も忙しい。 さめざめと降る雨の音を聞きながら 久しぶりにあの懐かしい痛みを感じながら眠りたい。 少し贅沢な時間。
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