そんな日の唄

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──そんな日の唄── 泣きたい日の影は薄く 歩道のデコボコでゆがんでは、電信柱のまっすぐにからまる。 泣きたい日の影は、弱々しい。 買い物カートを避けて、三輪車の前輪をよける。 商店街はと言うと、ブラブラ ブラブラの買い物袋。 アーケードはと言うと、電球の疎らな煤けた看板。 そして泣きたい影は フラフラ フラフラ 喫茶店の看板に躓くと、パチンコ屋のドアにぶつかる。 フラフラ 総菜屋のコロッケ。 魚屋の刺身の値札。 フラフラ フラフラ 言葉が1つ、思い浮かんだ。 僕はそれを、フラフラのまま通りへ転がす。 踏んだら危ない。 フラフラ フラフラ 踏めって言うのに! フラフラ フラフラ だからこう、 泣きたくなるわけで 正午を回ると、今日はそのまま夕方を迎えに行く。 泣きたい影は、どうやら迷子の様で、 僕は困って、歩くのをやめた。 右を見た。 左を見た。 買い物袋、アーケード、総菜屋のコロッケ。
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