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「いいから言われた通りにしろ!
何ぐずぐずしてるんだ。もう
時間も迫ってるんだぞ!」
フロアーに怒号が響き渡る。
怒鳴っているのはフロアー管理部長、
怒号を浴びているのは護だ。
「申し訳ありません。部長に言われた通りに進めてはいたのですが、このままでは間に合いません。少しだけ方法を変えてもよろしいでしょうか。」
「何を?!お前が今から方法を変えたからって余計に時間がかかるに決まってる!つべこべ言ってる暇があるならさっさと進めろ!何としても間に合わせるんだ!」
管理部長は社内にもワンマンで知られている。部長の指示する通りに進めなければなじられ、厳重注意、ことによっては退社にまで追い込まれる。だから例えもっと効率的で良い方法があったにせよ部下が思い付いた方法で進めること、部長の意思に背くことはご法度だった。
護は優秀で優しく機転もきく。
そこが部長にとっては鼻についたのかもしれない。ここのところ部長は護に無理難題ばかりを言いつけ、うまくいかないと今日のように怒鳴りつけるのだ。
そう、事がうまく運ばないのは部長の方法が非効率的でしっかり考えられたものではなかったからで決して護の落ち度ではないのに。護はあたかも部長のストレスのはけ口となっていた。
暫くこのような状況が続き、護も少しまいっていた。やや顔もうつむき気味で食欲も以前より落ちてしまった。
「護くん!」
冴子が声をかける。
護が顔をあげると、
「今日は暑いね~、水分いっぱいとらなくちゃね!いつも色々仕事で助けてもらってるお礼!飲んで!」
そう言って冴子は缶ジュースを一本差し出した。
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