第1章

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一旦席に戻った冴子は突如ムクッと立ち上がり、部長の元へと向かった。 「あの、部長。ジュースいりませんか?ちょっと余ってしまって。後で飲むのもなんですし。いつもフロアーをよくまわるように気にかけて下さってありがとうございます。」 誰もが耳を疑った。あれだけ皆に辛くあたる部長に対して、そんな言葉をかけた者はここ数年いなかった。 冴子自身、勿論いつもの部長の暴言や行動には疑問を感じ嫌だと思うところもあった。しかし、部長という立場の中で自分達とは違う何かを抱えながら仕事をしているのではないか、そういう思いもどこかで感じていたのだ。 その様子を護も見ていた。そして 「冴子は何を考えているのだろうか。自分に辛くあたる部長に。さっき冷たくしてしまったからか」 と懸念と悲しみの入り交じった表情になった。
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