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最後に、通信こけしで手紙を書いた。東北名産のこけしに手紙を入れて、荷札をつけて郵送する・・・というものらしい。
旅の記念に、互いの住所宛に送ることにした。
「これ、本当に郵送されるんですか?」
「大丈夫よ」
帰ったあと、お互いの手紙を読もうと約束した。
美聖さんは、新幹線のホームまで見送ってくれた。
はやく帰って、彼女の手紙を読みたかった。
ふと目覚めたとき、俺は新幹線の中でこけしを握りしめていた。
三月十一日を境に、このこけしは形見になってしまった。
家族でもなく、付き合いも浅かった俺は、葬儀にすらでれず。しばらくしてから彼女の安否を知った。
『今日は会えて、本当に嬉しかったよ。松島でまた、会えますように。みさと』
俺は、こけしをぎゅううっと握り締めた。
「碇って、いい名前ね」
「そうですか?」
「碇は、船をきちんと一定の場所にとどめる役目をするもの。確かな重みで海底に沈み込んで、ちゃんと捕まえててくれるのよ」
「はあ」
あのとき何となくきき流していたセリフが、今、妙に思い出される。
こけしに重りの石を括りつけ、そっと松島の海に沈めた。
「ちゃんと沈めよ」
「そして、ちゃんと捕まえててくれ」
俺は、海に向かってペコリと一礼した。
また、会いにきます。
心の中でそうつぶやいた。ー完ー
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