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”秋島 雄也<アキシマユウヤ>”は健やかに寝息を立てていた。
父親譲りの鋭い目元は瞼に隠れて見えないが、全体的な顔立ちの良さは見て取れる。
たまに寝言を呟く口元と、幸せそうな寝顔を見ていると、十八歳という実年齢より幼く見えるから不思議だ。
「雄也。そろそろ起きたら?」
扉を開けるなり、溜息混じりに雄也へ問い掛けたのは、従兄弟であり居候でもある”常盤 亮太<トキワリョウタ>”だった。
呼びかけても反応がなく寝返りをうつばかりの雄也へ、呆れながら歩み寄った亮太は軽く額を手の平で打った。
「痛っ……」
「ご飯、出来てるから」
何事かと反射的に飛び起きた雄也は、散らかった室内を見渡した。
あちらこちらに脱ぎ捨てられた洋服、テレビの前で乱雑に放置されたテレビゲームなど、特に変わった点はない。
「ああ、亮太か……」
痛みの原因が自分を起こしにやってきた従兄弟の仕業であると理解し、ベッドから緩慢な動作でおりた雄也は、寝ぐせで爆発した頭を掻きながらリビングへ向かった。
二階にある自室から階段をおりていると、焼きたてのパンが香ばしく鼻を擽る。
げんきんなもので、朝食の香りを感じると同時に、腹の虫は盛大に合唱した。
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