【第16話】シャネルの匂い

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「静かだな・・・」 幹線道路から外れて、 住民以外には利用されない小道の奥に佇む村瀬の豪邸の前に、 倫子たちは立っていた。 「あれ?」 遠藤は、 門の中を覗きこみながら言った。 「なんです?」 「あの車、さっきはなかったぜ」 「息子さんよ。 普段はあれに乗ってるみたい」 「いるのか?」 「ええ・・・」 「どうするんだい?」 「もう、正攻法でいくしかないでしょう」 「そう簡単にいくかな」 「・・・宇崎さん、 ここで怯んだら、こっちの負けよ」 敵は、 危ない追手を出したくらいだ。 宇崎たちの目的が何であるか、 とうに気付いているはずである。 このまま時間を与えてしまえば、 どんな手段で宇崎たちの追求を妨害してくるかわからない。 強大な権力に事件の真相を握り潰される前に、 なんとしてでも手を打たねばならなかった。 「まかせて」 倫子は、 自信たっぷりにそう言った。 宇崎は、 十歳も年下の女子高生があらためて頼もしく見えた。
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