第弐話「歳三 故郷へ」

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「このテレビで観たが、っていうか、くだらない他人の話と料理しかやらねぇから時間の無駄だったが。 テレビの歴史講座で観たが、薩長の新政府から150年経っても時代は変わらねえな」 「歳、明治維新じゃあるまいし、そんな時代じゃないよ」 コトノが注意したが、 「いや、コトノ、歳三さんの言う通り、今の政治体制も変わらないよ。 今だに長州と呼ばれた地方から総理大臣が8人も輩出しているしね。 吉田松陰の松下村塾があったから、とか言うけど、それだけじゃないキナ臭い理由があるんだろうね。 それ以上は大人の事情でカットね」 アサコが指でハサミの形を作りチョッキンした。 「そうだな、蛤御門までは長州なぞは、この時代で言うテロリストで、京を焼いて帝を連れ去ろうとしたからな」 歳三は醒めた眼で言った。 「そういえば、歳三さんは龍眼だね」 アサコは歳三の眼を見ながら呟いた。 「龍眼?」 「人相学でいう、尊い存在になる相、指導者になれる相よ」 「丁稚奉公で行ってた江戸の易者にも言われたな……。 でも、俺はそんな大層な者じゃないよ、それは俺が一番識っている」 男の憂いを漂わせながら、歳三は遠い目をした。 こりゃ女にモテたという口述は本当だな、とアサコは思った。 陶器のように透き通るような白い肌。伊達でオールバックにした漆黒の長髪。憂いのある龍眼に煌めく瞳。女が放っとかない存在だ。 「それはそうと、どうも丸腰でいけねぇや。刀か銃はないか?」 「歳三さん、現代では銃刀法違反で捕まりますよ」 「なんだそりゃ?」 「廃刀令というのが出来まして、刀は許可証がないと持てないのです」 「ふむ、平和な時代になったもんだ」
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