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「……沖田さん」
「コトノさんを斬れば、土方さんは消える。
……でも、あんな土方さんは新選組の鬼の副長じゃないよ」
激昂していく沖田に怖いものを感じ、コトノは後ずさった。
「貴女が土方さんを穢したんだ。貴女さえいなければー」
ぶつぶつ独り言ちて、沖田は刀の濃い口に指をかけ、じりじりとコトノに迫って来た。
「待ってー! 総司ぃ!」
歳三の怒号で、総司がびくっと身体を震わせた。
「なにやっている! コトノハをどうするつもりだぁ!」
廊下の騒ぎを聞きつけ、歳三が舞い戻って来たのだ。
歳三は一目見て、総司の異常な言動に怒りの沸点に達していた。
「……土方さん、邪魔しないでくださいよ」
虚ろな目で、総司は歳三に呟いた。
「コトノハに手を掛けるのは、この俺がゆるさねえ!」
歳三も刀の濃い口に指をかけた。
「はははっ、やるんですか土方さん?」
「お前次第だ」
「此処じゃ狹いよ……道場に行きましょうか?」
「望むところだ!」
騒ぎを聞きつけた他のメンバーも、歳三と総司のもとに集まってきた。
その中に琴を見つけたコトノは、
「琴さん、二人を止めて!」
喧嘩の仲裁を頼んだが、琴は二人を眺めてポツリと言葉を吐いた。
「ほっとけ。お山の大将を決めないと我等は駄目な性分なのさ。病気だと思ってあきらめな」
琴はあっさり言い放ち、口元のホクロを擦りながらニヤニヤしている。
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