第捌話「土方歳三 対 沖田総司」

15/21
前へ
/216ページ
次へ
天地自然の理と、心の理を以て剣理を極めることから天然理心流と命名された実戦剣法── 天然理心流は寛政年間の頃、近藤内蔵之助長祐によって創始された剣法である。 剣術以外に柔術、棒術、合気術を含む統合武術として、江戸郊外・多摩地域を中心に拡大した実戦を重視する剣法である。 命を懸けた真剣での立ち会いこそ剣理の実践であるとし、常に相打ち覚悟で臨み、敵の力が尽きるまで何度でも切り結ぶ。 敵の闘気が萎えた瞬間、踏み込んで勝負を決する剛毅木訥な剣法だ。 その稽古も苛烈で『表木刀に始まり、表木刀で終わる』とし、太く重い木刀を打ち合う『表木刀』の形を繰り返す。 これはすべて『鎬(しのぎ)』の部分で受け流す、『鎬(しのぎ)』を使う『手の内』を鍛えるための鍛錬である。 相手の斬撃を『鎬(しのぎ)』で受け流す技術は、実戦に欠かない要素で、此れがために幕末の動乱で天然理心流が強かった要因でもある。 ちなみに『鎬(しのぎ)』とは、刀の刃と棟との間にある刀身を貫いて走る稜線である。 刀で戦う際、相手の刀を受け流すには鎬の部分で相手の刀を受け、鎬が削られるほどに激しく闘うことから『鎬を削る』という表現が生まれたとある。
/216ページ

最初のコメントを投稿しよう!

119人が本棚に入れています
本棚に追加