第捌話「土方歳三 対 沖田総司」

18/21
前へ
/216ページ
次へ
剣気が総司という器一杯に達したかのように、ピシリッとその器から溢れなくなった。 (くる!)歳三が刹那の刻で想った。 「やっ、やっ、やっ!」 総司の裂帛の気組が炸裂した── 総司が『平青眼の構え』から、霞に消えた切っ先が歳三を襲う。 沖田総司の得意技『三段突き』だ! しかし── 神速の突きが三段まで数えることなく、その突きを歳三の諸手突きで繰り出された刀の鎬で受け流された。 そのまま刀の反りを使って、総司の喉の頸動脈を狙った! 〈すっしゅんっ!〉 剛力の歳三の斬撃を、総司は身を捩りかろうじて躱した。 エンドルフィンで満たされた『ピーク・エクスペリエンス』で、時間がゆっくり感じていた総司だったので、かろうじて躱せた斬撃だった。 「凄い……。『陰橈(いんぎょう)』の『無明剣(むみょうけん)』ですね」 「それを躱す総司の方が凄えよ」 再び笑い合う歳三と総司。 『無明剣(むみょうけん)』とは、天然理心流の中極位目録以上の者に伝授される『陰橈(いんぎょう)』の技形である。
/216ページ

最初のコメントを投稿しよう!

119人が本棚に入れています
本棚に追加