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剣気が総司という器一杯に達したかのように、ピシリッとその器から溢れなくなった。
(くる!)歳三が刹那の刻で想った。
「やっ、やっ、やっ!」
総司の裂帛の気組が炸裂した──
総司が『平青眼の構え』から、霞に消えた切っ先が歳三を襲う。
沖田総司の得意技『三段突き』だ!
しかし──
神速の突きが三段まで数えることなく、その突きを歳三の諸手突きで繰り出された刀の鎬で受け流された。
そのまま刀の反りを使って、総司の喉の頸動脈を狙った!
〈すっしゅんっ!〉
剛力の歳三の斬撃を、総司は身を捩りかろうじて躱した。
エンドルフィンで満たされた『ピーク・エクスペリエンス』で、時間がゆっくり感じていた総司だったので、かろうじて躱せた斬撃だった。
「凄い……。『陰橈(いんぎょう)』の『無明剣(むみょうけん)』ですね」
「それを躱す総司の方が凄えよ」
再び笑い合う歳三と総司。
『無明剣(むみょうけん)』とは、天然理心流の中極位目録以上の者に伝授される『陰橈(いんぎょう)』の技形である。
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