119人が本棚に入れています
本棚に追加
ロールス・ロイス社製の最高級車ファントム。
そのファントムの中でも世界に40台しかないアール・デコ・コレクションだ。
四角く荘厳なボディは黒真珠のような光沢で煌めき、V型12気筒6.75のエンジン音は猟犬の低い唸り声のように視る者を威圧する。
観音開きの後部ドアが開き、ブラックとホワイトのコントラストを強調したシートから、黒ビロードのタキシードを着た信長が降り立つ。
後ろのファントムから、典太を帯刀した十兵衛と、大剣を背負ったヴラドが共に降り立ち、信長の前にひれ伏した。
「約束の日ぞ。
土方歳三、貴様の回答を聞きに来た!」
信長が鷹のように鋭い眼光を、虎徹をぶら下げる歳三に向けて言い放った。
「……その前に訊いていいかい?」
「申せ」
「この前、信長公は日の本を踏み台にして、と言ったが」
「言った」
「どういう意味だい?」
「是非も無し。
この時代の日の本に、現代の日本に世界と闘う気概も覇気も無い。
戦に負けて、其の魂まで消失したのだ。そんな日本に如何程の価値があろうか。
維新政府とやらが開いた民主主義という思想は、格差を生む偏ったシステムよ。
最初のコメントを投稿しよう!