第玖話「決別」

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「ちぃ」 十兵衛が呻く。 典太の突きが総司の抜き打ちで逸らされ、ユウの心臓を狙ったのが僅かに上の胸を貫いたからだ。 「十兵衛ぇ、貴様ぁ!」 総司が怒りを露わにして、十兵衛に袈裟斬りを見舞うがー 十兵衛が刀を引き抜き、刀圏から後方へ飛び退いた。 「総司ぃ……」 ユウが総司を見て声を漏らすが、その可憐な口から〈ごほっ〉と血を吐いた。 呻いて〈ぐらり〉と、ユウのその身体が地に倒れた。 十兵衛に貫かれた胸からは、血がどくどくと流れて体外に抜けていく。 「十兵衛ぇ!」 後方へ退いた十兵衛を追撃しようとした総司だが、 「ぐはっ」 総司が口を押さえた。 「!?」 総司が不審げに、口を押さえた掌を見た。 その指の間から鮮血が溢れて、糸を引いた朱い雫となって地に流れた。 マスターであるユウが傷付いたので、スレーブである総司も吐血したのだ。 吐血した総司を見て歳三が叫んだ。 「総司ぃ!」 歳三が総司とユウに駆け寄ろうとするがー その隙にヴラドが大剣を掲げて、琴のマスターであるカグヤを襲った。
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