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「土方歳三が出た!」
コトノの電話に、アサコは「はいはい」と答えた。
「いや、本当に出たんだって!」
電話の声はかなり動転しているようだ。
「そりゃあそうよ、土方歳三のプログラムだもの」
「違う違う、幻覚じゃなくて、本物が出たのよ!」
ああ、コトノかなりキテるな、とアサコは思った。
憧れの土方歳三を見て、舞い上がってしまったのだろう。
それはそれで、プログラマー冥利に尽きると思った。
「とにかく、アサコ来てよ!」
「はいはい、仕事捌けたら行くわ」
「きっとよ!」
そこで電話は切れた。
しゃーねえなぁ、と昨日の今日だがアサコはコトノに会うことにした。
日が暮れ、帰宅ラッシュで混む駅前で、アサコの車はコトノを拾った。
「『お楽しみ』過ぎて、コトノおかしくなったの?」
「幻覚じゃないんだよ! それを確かめたくてアサコに見てもらいたいの!」
コトノの眼は真剣だった。
我ながらココまで真に迫るプログラムとは、こりゃ~神の領域に入ったな、とアサコは満悦する。自分のある決心にアサコは自信を持った。
「それで、その幻覚じゃない土方歳三はー」
「部屋でテレビ観てる」
「……一人で?」
「うん」
まぁいいや、そのボケを肴に酒でも飲もう、とアサコはすでに酒とおかずを用意してきたのだ。
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