第拾話「奪われて」

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宮本武蔵のマスターは幼女だが、武蔵を喚び出す実験にされ正気を失っていると聞く。 そして織田信長── マスターは信長の子孫だというが、自らの野望と欲望のためだけに信長は喚び出されたそうだ。 『戦国魔人衆』に愛は無い。 しかし土方歳三、琴、沖田総司、彼等『幕末新選組』には、其の愛とやらがあるのか? 琴のマスターを庇ったコトノハ、 マスターの危機に我を忘れた琴、 マスターが傷付き激怒した沖田総司、 仲間が傷付いたのを見て憤怒の表情だった土方歳三。 仲間が傷付くのが、己が身が傷付くが如く思うのが愛なのか? 『愛というものは与えられるものではなく、身を焦がし己が命を捧げ与えるものよ。それを忘れないで──』 エリザベータが最後に我に投げ掛けた言葉── それは我を呪いし禁呪か。 それとも己が命に問い掛けるメッセージなのか。 今と同じく、幽閉されていたヴィシェグラード砦の白い壁を見ながら、12年考えたが答えが出なかった。 だが明日になれば── 明日になれば、其の答えが出るだろう。 エリザベータが最後に遺した言葉の答えが。 エリザベータに似た琴と闘うことによって。 その時、我は開放されるのだろうか? ヴラドはいつしか、白い壁を見ながら思考の海に溺れていた。
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