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お通が寝返りを打った。
それらを見ながら、宮本武蔵はあの男のことを考えていた。
土方歳三──
マスターであるコトノハのために、きっと歳三はやって来るだろう。
生死を掛けて、歳三と自分は闘わねばならぬ。
其れがあの男と自分の運命である。
「う……ん……」
コトノが覚醒めたようだった。
壁に寄り掛かり、自分を視る武蔵に気が付き、コトノははっとした。
「すまぬ、今少し其のままでいてくれぬか」
武蔵が優しい声でコトノに願った。
コトノは傍らに眠るお通に気が付き、また武蔵を見た。
あの野生の虎のような宮本武蔵が、このような優しい顔をするのだろうか。
コトノは奇異に想い、そして寝ているお通を見た。
そうか、この娘が大事なのね。
コトノは武蔵の言う通り、しばらくはそのままの姿勢でいることにした。
「ここはどこですか?」
「信長公の隠れ家よ」
「わたしは人質なのですね?」
「……。」
武蔵は答えなかった。
「この娘の名はたしか……」
「お通と謂う」
「お通ちゃん」
「コトノハ殿、お主には話しておこうか」
「なんですか?」
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