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「おうコトノハ、おかえり」
玄関を開けると、男の挨拶の声がした。
部屋の中央で、あぐらをかいた男がテレビを観ている。
玄関でコトノは横のアサコを見やる。
アサコは硬直して「Oh My God!」とハリウッド映画のキャラのように感嘆句を連呼している。
「どう、見える……よね?」
コトノがアサコに確認する。
「我が網膜に映るは夢か幻か、不埒なコスプレじゃないよね!?」
「そんなドッキリしないよ」
「なんてクリソツなっ、ひゃほーい!」
「……ア、アサコ」
口から泡を飛ばし、興奮するアサコを心配するコトノ。
「玄関でうるせえな! コトノハの知り合いかい?」
歳三がやかましいな、という顔で聞いた。
「紹介するね、友達の──」
「栗塚 朝子(くりづか あさこ)と申します、土方義豊殿」
アサコが興奮して挨拶する。
「いやさ、歳三で良いよ、姐さん」
歳三は気持ちよく笑い答えた。
「義豊?」
「『豊玉発句集』に載ってるよ。そんなことも知らないとは!?」
「ああ、そんなんだ歳」
「お前さんは馴れ馴れしいん・だ・よ!」
歳三が「がうっ」と吠えた。
「するてぇと、このカラクリは幻覚が見れるもんなのか?」
「はい、歳三さん」
アサコが歳三の疑問に答える。さすがにコトノのように呼び捨てでは答えない。
アサコは部屋にあるSDマシーンを調べたが、電源はOFFになっていた。
どうやら高出力の負荷でブレーカーが落ちたようだ。
しかも、SDマシーンのログを解析すると、どうも外部に通信した痕跡が残っていた。それがどういう意味かはアサコはまだ解らなかった。
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