第弐話「歳三 故郷へ」

3/14
前へ
/216ページ
次へ
「おうコトノハ、おかえり」 玄関を開けると、男の挨拶の声がした。 部屋の中央で、あぐらをかいた男がテレビを観ている。 玄関でコトノは横のアサコを見やる。 アサコは硬直して「Oh My God!」とハリウッド映画のキャラのように感嘆句を連呼している。 「どう、見える……よね?」 コトノがアサコに確認する。 「我が網膜に映るは夢か幻か、不埒なコスプレじゃないよね!?」 「そんなドッキリしないよ」 「なんてクリソツなっ、ひゃほーい!」 「……ア、アサコ」 口から泡を飛ばし、興奮するアサコを心配するコトノ。 「玄関でうるせえな! コトノハの知り合いかい?」 歳三がやかましいな、という顔で聞いた。 「紹介するね、友達の──」 「栗塚 朝子(くりづか あさこ)と申します、土方義豊殿」 アサコが興奮して挨拶する。 「いやさ、歳三で良いよ、姐さん」 歳三は気持ちよく笑い答えた。 「義豊?」 「『豊玉発句集』に載ってるよ。そんなことも知らないとは!?」 「ああ、そんなんだ歳」 「お前さんは馴れ馴れしいん・だ・よ!」 歳三が「がうっ」と吠えた。 「するてぇと、このカラクリは幻覚が見れるもんなのか?」 「はい、歳三さん」 アサコが歳三の疑問に答える。さすがにコトノのように呼び捨てでは答えない。 アサコは部屋にあるSDマシーンを調べたが、電源はOFFになっていた。 どうやら高出力の負荷でブレーカーが落ちたようだ。 しかも、SDマシーンのログを解析すると、どうも外部に通信した痕跡が残っていた。それがどういう意味かはアサコはまだ解らなかった。
/216ページ

最初のコメントを投稿しよう!

119人が本棚に入れています
本棚に追加