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「土方歳三という男は、必ずわたしを救けます」
「……。」
「何故そのようなことを」
「戯れに訊いたまでよ」
満足したように信長が嗤った。
静かに屹立している武蔵が、嗤っている信長に口を開いた。
「お館様にお願いしたい儀があります」
「申せ」
「明日、土方歳三との一騎打ち、許してもらえますか」
「赦す」
「有難き幸せ」
「武蔵よ、貴様も土方歳三が来ると申すか」
「御意に」
「であるか」
再び信長が豪胆に嗤った。
嗤っていた信長がふいに、
「『生は行動のなかにあり、生の終焉は、行動の様態であり、本質ではない』
人間の生は、何をなしとげ、何をしなかったかで”測られる”とある。
古代ギリシアの哲学者アリストテレスの言葉よ」
自らに問い掛けるように、言葉を紡いだ信長。
「人間五十年 下天のうちをくらぶれば 夢幻の如くなり……」
有名な『敦盛』の一節を呟き、
「人間という存在が、夢幻のような虚無なのか、それとも歴史を刻む存在なのか──」
誰かに答えを求めるように、信長が虚空に問い掛けた。
あるいは、それは自らに問い掛けた己の存在意義だったのかもしれない。
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