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「いずれにせよ、明日が楽しみよのう」
コトノと武蔵を無視するように、信長は豪胆に嗤い続けた。
その明晰な眼は未来を、明日という決戦の日を見据えているようだった。
その頃、コトノを奪われた大御所邸にアサコが帰って来たが、その惨状を見て唖然としている。
「まさか、もう信長と戦闘をしたんですか?」
「アサコ、すまねえ。コトノハが奪われた」
無念そうにアサコに詫びる歳三。
「でも生きていますよね?」
アサコの問い掛けに、無言で頷く歳三。
「なら大丈夫。コトノはああ見えて、わたしより心の強い娘ですから」
「……そうだな」
「きっと歳三さんの救けを待っていますよ」
微笑むアサコに歳三が、狼の遠吠えのように勇ましく宣言する。
「ああ、約束したんだ。侍(さむらい)の誇りにかけて、コトノハを絶対死なせねえ!」
虎徹を掲げて、歳三が雄々しく猛る。
「それよりアサコ、お前何処に行ってたんだ?」
「ふふ、やはり歳三さんが闘う時はコレじゃなきゃね」
そう言って、アサコが荷物を見せた。
それはコトノの部屋に置いてきた函館の軍服だった。
「おお、すまねえアサコ」喜ぶ歳三。
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