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紳士服専門店の店内に入った三人。
歳三は迷わず、店の奥にズケズケと歩いて行く。
店の奥から女子店員が、奥に行く歳三を見て寄って来た。
「スーツをお探しですか?」
20代後半と覚しき、ちょっと化粧が派手な女子店員だ。
茶色に染められた髪はネオソバージュで、もう若くない自分を飾り立てている。
「ああ、そうです。失礼ですが、一番良い生地のスーツは何処ですか?」
先程迄の態度とは大違いで、歳三は丁寧な物腰で女子店員に聞いた。
呆気に取られるアサコとコトノを他所に、歳三は女子店員の案内で店の奥に行く。
女子店員は眉目秀麗な歳三を気に入ってか、しきりに髪を触って笑顔を作っている。
それを知ってか知らずでか、歳三は女子店員の案内に従っている。
「こちらなどいかがでしょうか?」
「ああ、いい生地だ」
歳三は女子店員の背中越しに、スーツの生地の感触を確かめる。その距離が、女子店員のうなじに息が掛かる程近い。
それに生地をまさぐる指が、女体を愛撫するように繊細で淫らな動きだった。
その指の動きに顔を赤らめ、女子店員が硬直している。
「こ、こちらはイタリア製になりますが」
女子店員が別のスーツを勧めた時に、歳三の掌と触れ合ってしまった。
「これは、失礼しました」
慌てて歳三が手を引く。本当に申し訳無さそうだ。
女子店員が(もっと触って欲しい)と訴える眼で歳三を見た。
「こちらの方が良いですね。
私も昔、服飾関係の仕事をしていましたが、ああ、これは良い生地だ」
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