第参話「土方歳三 対 宮本武蔵」

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その背に向かって、歳三は叫んだ。 「礼を言うぜ、おっさん!」 武蔵は振り返らず、朴訥な言葉を返した。 「ふふっ、血が滾るようなら、また相手になろう」 そして、飄然と武蔵は去った。 それを見届けたのか、橋の黒いライダースーツの男は、端に停まっていた赤いライダースーツの女が乗る大型のバイクに跨がり、立川方面へ走り去った。 「何者だい?」 アサコが呟いたが、コトノは佇む歳三に駆け寄った。 「歳、血が出てるよ」 「んっ、ああ、大丈夫、向かい傷さね」 歳三は額に流れる血を無視した。 「大丈夫じゃないよ」 そう言って、コトノはハンカチで血を拭った。 大人しく歳三はそれに従う。 「野郎、ナマクラ刀をよこしやがって」 歳三が刀を見て、雑言を吐き捨てた。 アサコが歳三の刀を見ると、その刀身が欠けていた。 小太刀を打ち落とした時の刃こぼれであろう。 「野郎って、誰か知ってるの?」 アサコが問うたが、歳三は無言だった。 コトノのアパートに帰ると、側道に先程の大型バイクが停まっていた。 その重量感のある無骨なマシーンが、道行く通行人を睥睨している。 ホンダ・シャドウファントム750である。 「まさか、野郎!?」 歳三が慌ててコトノの部屋に向かう。 コトノとアサコもそれに追従した。 玄関のドアを乱暴に開けると──
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