第肆話「沖田総司」

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「野郎、その声はやはり総司か!?」 歳三が叫んだ。 「いやぁ~、月代がないから、私だとわからないと思ってましたよ」 総司と呼ばれた男は、つるりと頭を撫でる仕草をして笑った。 長髪をポニーテールにしているので、むろん髷も月代もない。 笑った顔の糸目で男の瞳が見えないので、その笑みが本意か偽りなのか皆目判らない。 なんとも掴み所のない男である。 沖田総司── 江戸詰めの白川藩士の長男として生まれ、両親は幼い頃に死別している。 九歳で天然理心流 近藤周助が道場『試衛館』の門人となる。 近藤 勇の義弟となり、十九歳にして免許皆伝、試衛館の塾頭となる。 『剣を学ぶに異色あり。』と謳われる天才剣士だ。 新選組では、一番隊組長及び撃剣師範を務めた。 しかし結核を病み、戦線離脱を余儀なくされた。 近藤・土方に着いて行けず床に伏せ、近藤斬首の二ヶ月後に死去した。 「あっ、コイツ土足で上がってるよ!」 アサコの怒声で、総司がライダーブーツのまま、畳に立っていることに気付いた。 「ああ、ゴメンナサイ」 ライダーブーツを脱いで詫びたが、少しも悪いと思っていないような顔だ。 「っていうか、不法侵入だし(怒)」 アサコがなじった。
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