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その時──
酔い覚ましの水を持って来たコトノが、裸身のユウとそれを抱く歳三を見てしまった。
〈パリッンー!〉
水の入ったコップが落ち、廊下に割れ砕けた。
まるでコトノの心が砕けたように、暗い廊下にコップの欠片が乱反射する。
口を掌で押さえて、コトノは何も言わず走り去った。
「コトノハ!」
歳三は制止しようとしたが、すでにコトノは居ない。
「ちぃ、ややこしくなっちまったぜ」
歳三が苦虫を噛み潰すような顔で吐き捨てた。
「とにかく、お前はもう帰れ!」
「沖田の件、考えておいて下さい」
激昂する歳三に、ユウは念押しして歩み去った。
その夜、コトノは歳三の隣の部屋へ帰らなかった。
弁明できず、歳三は悶々とその夜を明かしたのである。
部屋へ帰らなかったコトノは、何故か中沢 琴の部屋に来ていた。
理由は簡単で、アサコの部屋にカグヤが居て入りずらかったからである。
部屋に押しかけたコトノに、琴は気にした風もなく訊いた。
「どういう理由か知らんが、マスターである土方殿と何かあったのか?」
ズバリ核心を突かれて、コトノは顔を上げた。
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