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「もう大丈夫。」
思考にふけっていたら息を整え終わったらしい。
「……ああ。」
「……」
「……」
なんだよこの沈黙は。
なぜか香奈は恥ずかしそうに俯いて視線をそらしてくる。
「用事ってなんだったんだ?」
しかたなく俺から話を切り出してみる。俯いていた香奈は顔をあげた。
「えっとね……今日って何の日か知ってる?」
そりゃ誰もが知ってるだろ。
今日は2月14日、バレンタインだ。
……まさかな。
「バレンタインだろ。」
「うん。」
いや、うんって言われても……
何が言いたいんだよ。
困って香奈を見つめる。
「蓮ってチョコ貰った?」
なぜか頬を赤く染めて聞いてきた。
こいつはなんて恥ずかしい質問をしてくるんだ。
ため息をついてわざと大げさに言ってやる。
「残念ながら俺は女子からは人気がないんで一つも貰ってねえよ。」
「そっか!」
香奈は一つも貰ってないって聞いて顔をぱあっと輝かる。
可愛い笑顔だなと思いながら喜ばれたことに少しイラっとする。
仕返しとばかりに嫌みたらしく聞いてみる。
「男子に人気の香奈は何人にチョコあげたんだ?」
「わ、私は誰にもあげてないよ!」
慌てたように首を左右に振り否定をする香奈。
慌てすぎだろ。
なぜか香奈は少し深呼吸して拳を握り、何かを決意したみたいで俺をまっすぐ見つめてくる。
「し、しかたないから一つも貰ってない蓮に私の手作りチョコあげるよ」
なんかこう上から言われると欲しくないような、でも欲しいような……
「本命なら貰ってもいいよ?」
少し期待を込めていじわるしてみた、すると香奈は顔をさらに赤くさせてぷいって視線をそらされた。
「バカ!義理に決まってるでしょ!」
はっきりと否定されてしまった。
胸がものすごく痛い………やっぱり俺達は幼馴染なんだな。
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