第一話

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「もう大丈夫。」 思考にふけっていたら息を整え終わったらしい。 「……ああ。」 「……」 「……」 なんだよこの沈黙は。 なぜか香奈は恥ずかしそうに俯いて視線をそらしてくる。 「用事ってなんだったんだ?」 しかたなく俺から話を切り出してみる。俯いていた香奈は顔をあげた。 「えっとね……今日って何の日か知ってる?」 そりゃ誰もが知ってるだろ。 今日は2月14日、バレンタインだ。 ……まさかな。 「バレンタインだろ。」 「うん。」 いや、うんって言われても…… 何が言いたいんだよ。 困って香奈を見つめる。 「蓮ってチョコ貰った?」 なぜか頬を赤く染めて聞いてきた。 こいつはなんて恥ずかしい質問をしてくるんだ。 ため息をついてわざと大げさに言ってやる。 「残念ながら俺は女子からは人気がないんで一つも貰ってねえよ。」 「そっか!」 香奈は一つも貰ってないって聞いて顔をぱあっと輝かる。 可愛い笑顔だなと思いながら喜ばれたことに少しイラっとする。 仕返しとばかりに嫌みたらしく聞いてみる。 「男子に人気の香奈は何人にチョコあげたんだ?」 「わ、私は誰にもあげてないよ!」 慌てたように首を左右に振り否定をする香奈。 慌てすぎだろ。 なぜか香奈は少し深呼吸して拳を握り、何かを決意したみたいで俺をまっすぐ見つめてくる。 「し、しかたないから一つも貰ってない蓮に私の手作りチョコあげるよ」 なんかこう上から言われると欲しくないような、でも欲しいような…… 「本命なら貰ってもいいよ?」 少し期待を込めていじわるしてみた、すると香奈は顔をさらに赤くさせてぷいって視線をそらされた。 「バカ!義理に決まってるでしょ!」 はっきりと否定されてしまった。 胸がものすごく痛い………やっぱり俺達は幼馴染なんだな。
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