3日目・休憩

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「……頼むから2人を返してくれよ」 前川は志郎の手を無言で払いのけ、部屋の出入り口へ踵を返した。 「……涼子、和希」 「皆様、残り時間は20分です」 まるで志郎の声が聞こえていないかのように、カートと共にドアの向こうへ消えた。 それから舞が食事をはじめるまで、誰も口を開かなかった。石塚は未だに気を失っている。 「……舞さん、食欲あるんですか?」 「あるわけないじゃない。でもホームレスが言ってた通り、無理にでも食べな きゃ身がもたないわよ。あんた達も食べとけば?冷めてるけど美味しいわよ」 舞は里香を一瞥すると、ハンバーグを頬張りながら答えた。そう言われ遼平が皿に視線を下ろすと、床は夥しい血液と吐瀉物で汚れているというのに、腹の虫が鳴った。徐々に非日常空間に慣れてきているような気がして複雑な心境だった。 小判型のハンバーグには丁度いい焼き目がつけられており、デミグラスソースの仄かに香る酸味が食欲を刺激する。胃袋からの要求に耐えられず、遼平はナイフとフォークを手に取った。 「里香も食べとけよって、どうかしたのか?」 里香は食事をしようとせず、落ち着かない様子だった。 「あ、うん。えっとね」 「どうしたの?」 食事を終えた舞も、怪訝な顔で里香に視線を向けた。 「……あのね、トイレに行きたいの」 里香が俯きながら小声で呟いた。 「そういえば、どうするか聞いてないよね」 舞が監視カメラに視線を向けたが、前川からの返答はない。代わりに天井の仕掛けが作動し、血溜まりの上に白い箱が落とされた。
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