3日目・休憩

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開いた天井が閉まる頃には、人数分の箱が床に転がっていた。最初に落ちてきた箱は、血溜まりのせいで側面が赤く染まっている。それ以外の箱にも、跳ねた血液が付着している。 「まさか、これにしろってこと?冗談よね?」 「冗談ではありませんよ。トイレは休憩時間のみ使用を許可します」 堪らず舞が引き攣った顔で訊くと、すぐに前川の淡々とした口振りの声が流れてきた。 「他に方法はないのか?処理はどうするんだ?」 「人間は求めすぎなのです。簡易用トイレだと思ってください。処理方法については、お気になさらなくても結構ですよ」 着替えの件もそうだが、前川は被験者を人間扱いする気はないようだ。舞が険しい表情で箱を見つめるなか、不意に里香が立ち上がった。 「……ごめんね、もう限界」 里香は最後に落下した箱を抱えると、部屋の隅へと足早に移動した。 「遼平君、後ろ向いててね?」 その姿を漫然と見ていると、里香は恥ずかしそうな表情を浮かべた。 「ついでに耳も塞いでおきなさいよ?」 「分かってますよ」 遼平が慌てて背を向けると、他の箱を覗いていた舞が片方の口角をつり上げていた。まさか舞も用を足すのだろうか。わざわざ目の前で、箱を選ばなくても良いと思うのだが。 遼平は目を瞑り、心のなかでで不満を漏らした。ふと志郎の存在が脳裏に過ったが、今の彼に排泄行為などに気を回す余裕はないだろう。 それから間もなくして、不意に背後から肩を叩かれた。小さく息を吐いてから振り返ると、頬を紅潮させた里香が俯いていた。 「こういうのは、しっかり用意してるのね」 右手にトイレットペーパーを持った舞が、苦笑いを浮かべた。どうやら箱の中を確認していただけのようだ。舞の紛らわしい行動に遼平は、再び心のなかで不満を漏らした
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