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「18時となりましたので、只今をもちまして休憩を終了とします」
排泄行為を済ました後、里香は夕食を半分ほど食べた。本人は食欲がないと言っていたのだが、舞と遼平で説得し、半ば強引に食べさせたのだ。
志朗にも勧めたが、生きる意味がないからと繰り返し呟くだけだった。そして石塚は、依然として意識を取り戻さない。
「これより実験を再開いたします」
次はどのような実験を行うのだろうか。それを考えるだけで目眩にも似た感覚に襲われる。そして前川の声が、緊張の色を濃くするのだった。
鼓動は内側から突き破りそうなほど、強く胸を打っている。
「今回の実験では、村山様のみ声を発することを許可します。私が質問するので答えてください」
里香の心配そうな視線を尻目に、遼平は頷いた。
「それでは最初の質問です。谷村様には妹がいますね?」
「……ああ、いるけど」
ここでの会話は筒抜けなのだから、前川が知っていても不思議ではない。そのことを思い出し、遼平は落ち着いて答えた。
「お名前は?」
「……谷村遥」
「なるほど。遥様はお元気ですか?」
「答える必要があるのか?」
遼平は違和感を覚えた。個人的な質問に答えたところで、意味があるとは思えないからだ。
「谷村様が質問の意味を考える必要はありません。あなたの役割は回答するだけです」
「……身体は健康なはずだ」
「身体はといいますと、それ以外は違うのですか?」
「どうせ両親が事故で他界したのは聞いてたんだろ? そのストレスが原因で、
失声症っていう精神疾患なんだよ。声が出せないんだ」
「そうでしたか。ちなみに今も話せないと、お思いですか?」
その言葉にも違和感を覚えつつ無言で頷くと、前川の乾いた笑い声が聞こえてきた。
「なるほど。谷村様は、そう思っているのですね」
「……どういう意味だ?」
「さて、次の質問です」
「待てよ、俺の質問にも答えろ」
遼平は拭い切れない不安に襲われ、思わず声を張り上げた。
「谷村様は殺人という行為を許せますか?」
「だからーー」
「殺人を許せますか?」
「聞こえてるんだろ? 質問に答えろ」
「先程も言いましたが、ただ回答することが谷村様の役割です」
苛立ちが募る遼平に、淡々とした言葉が降りそそぐ。どうやら答えない限り次に進む気はないようだ。
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