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処世術なのか人当たりの良さそう笑顔で握手を求めてくる。仲直りの握手か、馬鹿げた行動を心の中で嘲笑する。
「ごめんなさい。二人が迷惑かけて、僕は」
「謝る気持ちがあるならそれでいい」
構うことはない、無難な台詞を残して再び人波に乗って入学式の会場へ。数歩進んだところで言葉を投げ掛けられた。
「僕は天津命(あまつみこと)よろしくっ」
(馴れ馴れしい奴。無視だ、無視)
「命が話しかけてるのに無視するなんて」
「非常識ですわ」
キャンキャン喚く声を完全無視。静かに入学式が始まるのを待つ。予定通り入学式は始まり、恙無(つつがな)く進行していく。
「新入生代表、天津命」
(なんだ、この胸の高鳴りは)
「はいっ」
天津の登場に黄色い声援が体育館を埋め尽くす。正直、かなりの迷惑行為だが俺一人が言ったところで何も変わらない。男子は男子で「リア充、爆ぜろ」と呟きながら僅かばかりの殺気を天津に当てている。
それよりも天津の名前を呼んだ生徒指導の近藤武司(こんどうたけし)先生の頬がうっすら赤みを帯びている。筋肉隆々の身体、下手に関わらない方が良さそうだ。
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