0人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
高校に入学して最初の春が来た、同時に美浜高校製菓研究会も二年目を迎える。
今から話すのは、私青葉凛が親友日向朱里と出会い、製菓研究会を作るまでの物語。
中学3年クラスのみんなが最後の思い出づくりに精を出す中、毎日一人だけ教室で読書をする、そんな子を私はそっとしておけなかった。
「ねぇ、なんで毎日本読んでるの?」
「だって、本は自由じゃない、そんな世界が好きなの」
その言葉はなんだか自分とは違う世界を見ているかのようだった。
「それにね、私友達がいないの、それに友達とかっていろいろ疲れるしね」
ちょっと寂しそうにその子は言った。
「そんなことないよ、たしかに喧嘩したりすることもあるかもしれないけど、一緒にいると楽しいよ」
「でも、私こんな性格だし、相手にしてくれる子なんていないよ」
「そんなことないよ、朱里ちゃん可愛いし、運動もできるのに、友達作らないなんて逆にもったいないと思うな」
「やっぱり私にはきついかな、もう中学も終わるし、時間がないよ」
私も友達が多いほうではないしクラスでもあまり目立つこともない、しいて言えば勉強が少し得意ってくらいかな。
でも朱里ちゃんは本当に可愛くてきっと男の子にもモテるだろうな、と思った。
それなのに朱里ちゃんは自分に友達ができないと決めつけているようだった。
「じゃあまずは私が朱里ちゃんの友達になる」
「ほんと?」
「もちろんほんとだよ、ほら友達作るなんてかんたんなことでしょ」
それが日向朱里との出会いだった。
その後朱里ちゃんは次第にクラスにも溶け込み、あの別世界にいた朱里ちゃんは着実に私との距離を縮めていった。
ちゃん付けだったよびかたも、いつのまにか呼び捨てに。
今では友達が親友に変わった。思い返せばあっという間のことだ。
しかしこの些細な時の出会いがなければ今の私は存在しなかった。
最初のコメントを投稿しよう!