出会い

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「なんか新鮮」 「なにが?」 朱里は首をひねっている、どうやら本人には自覚がないらしい。 「ついこの間まで、あんな無表情だった朱里がこんなに楽しそうにしてるなんて、なんかうれしい」 「ありがとう、全部凜のおかげだよ」 とても短い一往復の会話で、たぶんお互いの気持ちは全部伝わっただろう。 この気持ちが一生変わらなければいいな、そう思った。 「朱里、凜ちゃん、準備ができたから手洗って調理場にきなさい」 今日のケーキ作りは、朱里の家である「洋菓子の日向」が定休日のため、お店の調理場を使わせてもらえることになっていた。 そこには、本で知った基本的な道具から、謎の形をしていて、いったい何にこれを使うのかと思うような道具、とにかく多種多様な調理器具が置いてあった。 ちなみに今日は、私と朱里で一つ、朱里のお母さんが一つの計2つのケーキを作る予定になっている。 「私は卵割るから、凛は砂糖袋から出しておいて」 朱里主導のもと私たちは、黙々とした準備を始める。 一週間勉強した知識を存分に発揮してかなり手際よく作業は進んでいった。 「私がついてなくても大丈夫そうね…オーブン使うときになったらお母さん呼びなさいね」 朱里のお母さんはそういって、自分のケーキ作りを始めた。でもオーブンだけは常務用の大型オーブンなので手伝ってもらう必要があるようだ。 わずか20分ほどでスポンジ部分の下準備が完成し、 スポンジの部分を焼き上げている間に、デコレーションの準備に取り掛かる。 生クリームと砂糖、キルシュを混ぜて、ショートケーキに塗るクリームを作っていく。 「おばさん、キルシュってなに?」 「キルシュって言うのはね、サクランボの蒸留酒で、香り付けのために使うものだから、お家で作るときには別にいれなくていいんだけど、いれれば香りがよくなっておいしいのよ、代わりにラム酒を使ってもいいわね」
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