謎の物件

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 俺はいつの間にか寝てしまって、朝が来たのかとも思ったが、傍で猛に刺激臭を撒き散らすお香が消えていないことからも、大して時間が経っていないのは明らかだった。俺が寝ている間に誰かが忍び込んで、こっそりお香を点け足した可能性も捨てきれなかったが、俺は何らかの理由で、夜なのに明るいと判断した。  最初に確認したのは部屋の蛍光灯だ。だが、当然明かりは点いてない。そして、俺は窓から空を見上げた。明るい原因はそこにあった。巨大な彗星が流れていたんだ。  こんなに大きくて明るい彗星が見えるなら、以前からテレビで騒がれていてもおかしくないことに気付くべきだったが、そんな事を考えている余裕はなかった。その幻想的な美しさに、ただ茫然と浸っていた。日本じゃ彗星や流れ星なんかは幸運の象徴とされていて、願い事をするのが一般的だが、外国じゃ不吉の予兆や、神様の啓示なんかの意味もあるらしい。もしかしたらこの村の住人は、この彗星に備えていたんじゃないかと思った。  流れ星はすぐに燃え尽きて消えるが、巨大な彗星は一向に消える様子がない。それどころか、明るさと大きさを増していった。俺はそんなことあり得るはずがないないと思いつつも、現実を直視するしかなかった。そう。その彗星は間違いなくこちらに近づいて来ていた。  彗星がある程度まで接近してから、目の前一杯に広がるまでは一瞬だった。彗星は全体が光っているのではなく、無数のサーチライトみたいのが付いた巨大な本体が、高速で回転している物だとわかった。俺は認めたくなかったが、ここまで来たら認めるしかなかった。これは彗星なんかじゃない。UFOだってな。……なんだよ? ここは笑うところだぜ?  さっきも話したが、俺は幽霊にだって会っているんだ。今更UFO程度で驚きはしないよ。どうだ? 俺の現状認識能力は相当なものがあるだろ? まぁ、それは今の俺の態度で十分わかると思うがな。
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