第1話

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「な、っっにすんだよっ!!」 男はカツラを床に投げ捨てると鳥肌がたっている頬をゴシゴシと力強く制服の袖で拭いた。 「そんなに耳元で叫ばないでよっ。なおちゃん♪」 「っ!?その名前で呼ぶなぁ!!」 そう言って耳を押さえながらニコニコ笑っている同じクラスの尚宮和輝(なおみや かずき)である。 こいつは世の世界で言うイケメンの頭脳明晰の男だが、はっきり言ってゲイだ。 そしてなおちゃんこと桜田直也(さくらだ なおや)は見事に公立から落ちてこの男子校に通う高校1年生。 ちなみに得意なことは料理DEES! 「ちょっと、なおやん!せっかく僕がセットしたカツラ取らないでよー!!大変だったんだからぁ」 「うるせぇ!何かこうっモゾモゾすんだよ!!」 そのすぐ近くで椅子に座りながらブーブー言っているのは今で言う可愛い仔犬系男子の如月優心(きさらぎ ゆうしん)。 抵抗する俺に桂をかぶせた張本人である。 「まぁまぁ、直也も優心もそこまで!文化祭までもう少しなんだから頑張ろうぜ!」 何とかこの場を納めようとするこの劇の監督をする道下匡太(みちした きょうた)は穏和で優しいやつ。 この中で一番まともなやつだと思う。 「つーか、何で俺が姫役なんだよ!!」 バンッとそばにあった机を叩いて怒りをぶつける。 静まり返るクラスのやつらが初めて心を一つにした。 「「「女装するのが嫌だから!!」」」 「よしお前ら表に出ろ!」 直也は目に見えそうな怒りマークを出すとある意味笑顔で笑った。 ことは2週間前にさかのぼる。
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