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6月
希春は柚多夏のいる大阪で新婚生活を送っていた。
柚多夏は仕事が忙しくて帰りが遅く、土日も仕事という日が少なくなかった。
家にいる時の柚多夏はいつも寝ていた。
…この人は7つも年下だけど、私より長生き出来ないんじゃないか…
と心配になるほどだった。
甘い新婚生活は希春が大阪に来てからは無かった。
年も年だから こんなものか、と希春は思っていた。
でも、大阪と横浜で別々に暮らしていた時の方がイチャイチャしていたし、話も沢山していた。
二人で過ごす時間を大事にしていたと思う。
もう柚多夏くんは私に飽きたのかな?
スピード離婚になったらどうしよう…
やっぱり若い女性(ひと)のが良かったと後悔してたらどうしよう…
と 希春は要らぬ心配をする時がある。
そんな時は
寝ている柚多夏の顔を覗き込み、
柚多夏の唇に軽いキスをして間近で寝息を感じてみたり
柚多夏の左手の薬指のリングを確認した。
『どうしたの?』
柚多夏が目を覚ました。
『ゴメン、起こしちゃったね』
と希春が慌てて柚多夏から離れようとしたら
『俺を寝ている間に襲うつもりだった?』
『いやいや、そうじゃなくて』
希春が慌てて自分のベッドに戻ろうとしたら、柚多夏の左手が希春の右手を捕まえた。
『今日はここで一緒に寝よう』
と柚多夏が掛け布団をめくった。
『柚多夏くん、明日も仕事だし…』
希春が照れながら恥ずかしそうにドギマギしていたら
『うん、一緒に寝るだけだよ』
と柚多夏が眠そうな顔で笑った。
『そうっか、うん』
希春は自分の勘違いが恥ずかしかったけど、一緒に一つのベッドに入って柚多夏の温もりを感じる事が出来て安心した。
柚多夏が希春をギュッと抱きしめて
『ゴメンね。寂しい思いをさせて』
と言った。
『ううん、仕方ないよ。お仕事が忙しいんだから』
『希春とくっ付いてると安心。やっぱりダブルベッドに変えようよ…』
と言って
スースーッと柚多夏の寝息が聞こえて来た。
本当に疲れているのに気遣ってくれる優しい柚多夏を頼もしく思えた。
柚多夏の優しい温もりを感じ、充分に安心出来た希春もいつしか深い眠りに入ってた。
やっぱり、一緒にいるだけで
とても幸せだった。
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