遅れて来たメール

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金曜日の朝 希春がキッチンでティーパックを入れたカップにお湯を注いでいた。 夕べは徹夜だった。 珈琲派だった希春が 最近は紅茶ばかり飲むようになったのは柚多夏の影響だった。 柚多夏が紅茶派だったから いつからか希春が密かに真似をしていたら、 そのまま紅茶派になってしまった。 秋斗がリビングに来て、 『その年で徹夜はこたえれるでしょ?やっと書き始めたんだ』 と開いたままのパソコンを見て言った。 『わかる?』 『そりゃあ、リビングでパソコン開いて黙々とやってるから…マザーは作家だったしな』 『芥川賞、直木賞、狙うわよ』 『大きく出たな』 希春は日曜日の夜から執筆活動に専念していた。 希春の携帯がブーブーッと音を立てながら震えた。 メールの着信だった。 差出人は柚多夏。 ‘今夜、炙りに行きます。久しぶりに飲みませんか?’ …柚多夏くんはどういうつもり? やっと書く気になってるのに書く事に集中したい… 希春は直ぐにはメールを返信出来なかった。 このメールがもっと前に美人の存在を知らない時に来ていたら、どんなに嬉しかった事か… のろけを聞かされるのかな、 相談なんかされたら… ちゃんと答えられるかな…。
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