紫陽花の唄

4/38
前へ
/38ページ
次へ
彼女が、この時代ではなく、150年も先の時代より神隠し的なものにあい、その身を運ばれたのだという事実を知ったのは、古高の死・・・・否、行方が分からなくなってから4年後の、慶応4年、のちの明治元年。 謹慎処分を受けた慶喜に伴い、水戸での謹慎生活を余儀なくされる中、彼女の元を訪れた一人の青年。彼女の幼馴染。そうして彼女の元へ届けた荷物。 それこそが、彼女らをこの時代に運ぶきっかけになった道具なのだという。 幼馴染はは、紫乃に言った。 「この時代に残ることで、紫乃がつらい思いを引きずるだけなら・・・・一緒にに帰ろう。」 再三にわたり、結田という青年はは紫乃を説得した。この時代にいても、得るものはもう無い。4年も姿をくらませたままの古高が、この世に生を受け続けているとは考えがたいほどの年月が 既にたってしまっていたのだ。 幼馴染の言葉に、首を振り続ける紫乃。かたくな姿勢もすべて、彼女の古高への思いなのだろうか。 「私は、ここにいるよ。」 「紫乃・・・・でもな?」 「・・・・・・・いいの。決めたの。」
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加