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「うーん、やっぱ似てんだよねー」
「は?」
「俺の知り合いに面白い人がいんだけど、ヒロ君その人に似てんだよね。無気力っていうか、自由人っていうか? ああ、顔は向こうが美しすぎてぜんっぜん似てないけどね」
あ、殺意を覚えた。
「……そういう嫌そうな顔もそっくり。かーわいいねー」
「‥‥‥‥‥‥意味がわかりません」
瞬間、肝を冷やした。
先程から見せていた笑顔と同じもののはずなのに、その瞳には狂気が宿っている。
獲物を捉えた獣のように、俺の、その先を見ていた。
「あの、もういいです。すぐそこみたいなんで……」
「何で? 部屋まで送るって言ったでしょ?」
俯く俺の顔を覗き込み、ね? なんて笑って頬をつついてきた。
打って変わって無邪気な笑顔が恐怖心を掻き立てる。
悪い奴ではないのだろうが、感情の起伏が激しく、それを隠そうとする姿は非常に危うい。
ここは逆らわないのが賢明だ。
無言のまま頷くと、道本はまた嬉しそうに笑った。
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