うらはら

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エレベーターを降りた直後、またもや後悔し始めた。 これは……この広さは、迷子になる確率大だ。 ホテルか! とつっこみたくなるほどの廊下の広さ、長さ、そして尋常じゃない部屋数に眩暈を覚える。 下見のときに一度来ているとはいえ、こうまじまじと見るのは初めてだ。 今からというのも変な話だが、卒業するまでこの空間に溶け込める気がしない。 確か、俺の部屋は一番奥だった はずだ。 何と、一人部屋。 主席だから、特待生だから、というわけではなく、単にあぶれたからだそうな。 俺にとっては願ったり叶ったり、他人との共同生活なんて御免蒙る。 昔から協調性の欠片もないと言われてきた人間で、俺自身それを否定する気もない。 一人最高、一人万歳。 「ただいまー……」 と、返ってこないとわかっていても言ってしまうのは長年に渡って染み付いた癖だ。 積んだままのダンボールの横を過ぎ、ソファに鞄を放り投げた。 本来なら共用スペースであるはずの場所を一人で使えるというのは何とも贅沢だ。 備え付けの家具は一体いくらぐらいするのだろうかと考え、瞬間、鞄を持って立ち上がった。 あまり、使わないようにしよう。
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