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熱気がすごい。
何を期待しているのか、大半の生徒がそわそわと落ち着かない様子だ。
鏡で顔やら髪やらを確認する、その光景の異様なこと。
昨日のドラマの何とかくんかっこよかったよね、だの、今日髪型決まってるね、だの、香水変えてみたんだけどどう、だの、どこの女子高生だ。
お前達にかっこいいと言われてもその人はきっと嬉しくない。
その毛の短さでどうバリエーションを出すのか。
どう見ても女物としか思えない可愛らしい瓶に入った香水をお前が使うな、そして貸すな。
「うおぉぉ!!」
「きゃぁぁ!」
「っ……!?」
まあ男子校なんてこんなもんか、とげんなりしていると、突然生徒達が叫び出した。
歓声、というより、もはや雄叫びに近いそれを受けているのは、俺とそう年齢の変わらない人達。
本来は来賓席であろう場所に腰を落ち着けたその人達は、皆それぞれ整った顔立ちをしている。
同じ制服を着ているはずなのに、顔がいいだけでここまで違うのか。
この様子だと、ここの生徒たちにとって同性というのはどうでもいいことなのだろう。
俺のように高等部からの外部生ならともかく、初等部や中等部からの生徒はほとんどが彼らにやられていると言っていい。
その証拠に、左から二番目の、優しそうな人がはにかみながら手を振ったら、何人か倒れた。
不思議と嫌悪感はなかったが、俺はこういうのには巻き込まれたくない。
幸い、俺の顔は良くも悪くも普通なので、ああいう綺麗な人達が好きであろう生徒に好かれることはまずないだろう。
「新入生代表、天津裕徳君」
「はい」
いつの間に始まっていたのか、もう名前を呼ばれてしまった。
起立や礼などは、無意識のうちにやっていたらしい。
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