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パチッ―パチッ―
暗闇を照らす松明の小さく爆ぜる音が聞こえる―
ポンッ―ポポン
華やかな雅楽の音が辺りの空気を浄化していく―
その浄化された空気の中心に用意された神楽舞台
シャン―シャン―
その舞台で鈴を鳴らし軽やかに舞うは能面を被った人物。
鮮やかな着物を着こなし袖を翻す姿はまさに―――
『―ぃ…お…―おい!!』
「え…あ……はい?何ですか?浅夏さん」
遠くで聞こえたと思っていた声は次第にはっきりとし、その意識は現実へと引き戻される。
目の前で大声で肩を揺らす男はイライラを隠すことなくこちらを睨んでいた。
まだ薄ぼんやりした意識で顔と“星”を確認してやっとその人物が誰か理解する。
「何ですか?…じゃねー!」
「あいたッ」
ぼんやりとした声が彼の癪に障ったのかボクの額を指先で突く彼は、一週間前に知り合った浅夏さん。
彼の星に焦りと戸惑いが感じられた為話し掛けると記憶を取り戻す為の手伝いを依頼された。
これも何かの縁なのだろうとその依頼を受け入れ、ここ数日、行動を共にしている。
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