10人が本棚に入れています
本棚に追加
幼い頃。
どれほど幼い頃かというと、まだ言葉も話せないような赤ん坊の頃。
もちろん自我なんてあやふやで意識もはっきりとしてないような時期だけれど、いわば感覚的に覚えていることが一つある。
重い
重たい瞼を開くと
僕は絨毯の上でまだ若い母さんに胸をさすられている。
何か口ずさむような調子で何か歌っている様子の母親。
子守唄だろうか。
窓から差し込む光
朝を知らせる鳥のさえずり
不意に母さんが僕をベッドに寝かせ、立ち上がり部屋を後にしたとき
それらその場の空間を遮るように、そいつは僕の耳元で囁いた。
―泣くの?母ちゃんが離れたくらいで―
少し掠れたような声色
不思議と映像と共に頭に残っている言葉
たぶんそれが、僕とそいつのファーストコンタクトで
その頃から、時々僕の前に現れては僕の耳元で囁いた。
最初のコメントを投稿しよう!