昔の記憶

4/7
前へ
/7ページ
次へ
夏休みが明け学園祭が近づいてくると、ケンちゃんの周りにはグループができていた。 当時、放課後の遊びで流行っていたポコペンを 僕もそのグループと一緒になって遊んでいた。 「ポコペン、ポコペン、だーれがつっついた、ポコペン」 つっついた人を当てられなかった僕は、100秒数えたあと鬼になって探したけど 始まる前から打ち合わせていたんだろう 日が暮れるまで散り散りに隠れたはずのみんなを探しても、たったの一人すら見つからなかった。 次の日の朝、僕はいつものように声をかけると そこにいつものケンちゃんはいなかった。 「いつもニヤニヤしやがって、キモいんだよお前」 そう一言だけ残したケンちゃんは、僕を置いてグループで朝礼に向かった そんなときでも笑っていたのかもしれない。 表面で固まったままの張りぼての笑顔の落としかたを、僕は知らなかったから。 ―泣くんだろ?お前は弱っちい奴だなぁ― その頃にはもうお馴染みになっていたそいつに 「うるさい」 と一言呟いた。 明かりの消えたクラス グランドから聞こえてくる校長の挨拶 カーテンの隙間から僅かな光が差し込んでいた。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加