6人が本棚に入れています
本棚に追加
帰り、カズ君の提案でカフェに寄る。
オールドアメリカンのカントリー調にまとめられた可愛い内装。こんなオシャレなお店でお茶するの、何ヵ月振りやろ?下手したら1年以上振りかも。
『女の子と一緒じゃないと入れないからね、こういう店。』
カズ君も嬉しそう。
ヨカッタ。
店員に案内された席に着きオーダーする。カズ君はホットコーヒー。私はオレンジジュース。それと…
『すみません、氷なしでお水いただけます?』
店員が行ってから、初めにテーブルに出された氷入りのお水で乾杯。
『お疲れ~。』
一口飲む。冷たッッ。
『今日はありがと。カズ君、居てくれて助かった、色々と。』
『あぁ…』
そっけない返事。そりゃ、初対面の人のあんな遺体見せられたらこうもなるか…
『あ、あのさぁ…酷いよな、アイツら』
ん?お姉さん達?
『前から気になってたんだ、女子社員の態度というか、仕打というか…』
あ、そっちね。
『いいの、いいの。私イジメられ慣れてるから。ってか、気付いてたんだ。』
『わかるよ。あれだけあからさまだと。』
店員が水を持ってきて、会話を遮る。
『失礼しま~す』
私はいつものように店員に愛想笑い。
『ありがとう』
店員の気配が遠退くのを感じながら、バッグの中の必須アイテムをテーブルの上に出し広げる。
『何それ?まさかそれ全部飲むとか…?』
カズ君も驚きの薬の量。
『うん。これ、1回分。』
慣れたもので、数種類16錠を2度に分けて水で流し込む。
不思議そうな顔で眺めるカズ君。やっぱり気になるよねぇ。
『甲状腺の病気持ちなんだ。この薬が効かなくなったら死ぬの。』
カズ君になら話してもいい気がした。本当は目の前に居る人間なら誰でも良かったのかも。とにかく、聞いて欲しかった。
『父が昔、原発の建設に関わっていてね、被爆してるんだ。で、私も遺伝で、同じ病気なの。』
『そう、なんだ…』
『お陰で子供も出来にくいし、産んでもまた病気が遺伝する可能性が高いし。子供の時からずっと薬漬け。』
『治らないの?』
『うん。今のところ治せる薬とか治療はない。ただ症状を抑えて、いつか薬への耐性が出来て効かなくなったら悪化して…あ、でも、心配しないで!父も同じ薬飲んでて、まだ普通に生きてるんだから。確かにいつ薬が効かなくなるかはわからないんだけど、それはほら、みんな一緒でしょ?突然、事故って居なくなるヤツもいるわけだし。』
『…。』
最初のコメントを投稿しよう!