6人が本棚に入れています
本棚に追加
小太りは言葉を続ける。
『はい。俗世の方からはそのように呼ばれる事もあります。えー、バイク事故ですね。先刻、13時13分スピードの出しすぎでカーブを曲がりきれず…』
説明の途中ですが、
『困るッッ!』
俺の一喝に黙る小太り。
『今は困る!だってさ、俺、彼女と…』
『あーコリャ酷い。』
何だ、ゴスロリ?手に持ってるタブレットの画面を見ながらうなずいている。
『【別れてやる】ナンテ、どのツラ下げて言ってやがるんですか?!キモ~い。しかもヒモのクセにエライ上から目線。ありえないです。彼女さんが怒るのもわかりますね~』
『ヒモって言うな!』
まぁ、ヒモだけど。俺だって好きでヒモだったワケじゃない。
『仕方ねぇだろ?仕事がないんだから。』
と、小太りが割って入ってきた。
『えぇ、えぇ。わかります、何枚も履歴書書いて、面接にも行って、ねぇ…、だけどこのご時世、なかなかね…思い悩んで、それで死なれる方も最近は多いです、はい。』
『まさか、自分で?キモっ』
うるせぇ、ゴスロリ。
『違う!ってか、それ、見せて。』
ゴスロリの持っているタブレットに何が表示されているのか気になる。
『ダメーっ。』
『見せろよ。』
『人にモノを頼む態度とは思えませんね。わ~、彼女さんカンカンです。アナタのマンガとかゲームとか、次々とごみ袋に…』
何だ?奈央の今が見られるのか?くそぉ、しゃくに障るが…
『お願いです。見せて下さい!』
不本意ながら俺、土下座。
『まぁ、いいでしょう。見せるだけだよぉ。』
『ありがとうございます、死神さま~』
画面に映っているのは、無言で俺のものを処分していく俺の彼女、倉橋奈央。
『あぁ~、それ…奮発して買ったヤツ…』
『アナタ本当に往生際が悪いですね。』
『るせぇ。おぃ…一個ぐらい形見でとっておこうという気はないのかよ?』
『無いでしょうね、まだ知りませんから、アナタが事故ったって。そろそろ、彼女にも連絡行く頃だと思いますよ…ほら、キタ。』
奈央の携帯の着信音がなりはじめた。その時、
『おーい、すまないがちょっと来てくれ。』
小太りが、ゴスロリを呼んだ。
『スミマセンね。課長が呼んでるので、行ってきます。アナタは此処でちょっくらお待ち下さい』
へぇ、小太りって課長なんだ。ってか、続きを見せろ!!
『えー、いいとこだったのに。それ、置いてけ。』
『ムリです。アナタは、此処で短かった人生でも、振り返ってやがれ。でゎ。』
と、言ったかと思うと、目の前から消えた。小太りもいない…
どいつも、こいつもムカツクけど…
こんな所で独り残されて、どぉなる、俺?!
最初のコメントを投稿しよう!