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誰もが知っている有名なファストフードチェーン店。
そこに彼は居た。
ガヤガヤと懐かしい騒がしさを鬱陶しく思いながら、彼はレジカウンターから受け取ったトレイを空いているテーブルに置く。
「ふう。人混みってこんなに苦しかったかな?」
彼の連れの優男が向かいに座って一息ついた時に、愚痴を呟く。
彼は座ってからハンバーガーの包みを開き、言葉を返す。
「息苦しいもんだよ、人が集まり過ぎるとな。前は慣れてて感覚が麻痺してたから感じなかっただーけ」
ハンバーガーを豪快に一齧り、すると、
「……っ!……んぐぅぅ!」
意図的に濃く付けられた味付けと独特の肉の臭いが口内から鼻腔へと突き抜ける。
そのリアルな感覚にむせそうになるが、なんとか咀嚼し飲み込んだ。
「だ、大丈夫……?」
優男が心配そうに声をかける程に、飲み込むまでの様子は酷かった。
彼は手をひらひらさせ、問題無いと意思を伝える。
「気を付けとけ。味覚と嗅覚が敏感になっててやっべぇ」
「うぇ、そうなの?」
「そーなの、慣れるまできっついなこりゃ」
「そうなんだ……じゃ、いただきます」
律儀なヤツ、と思う彼の前で小さく一口。
「…………………………うん、確かにキツいね」
優男はしかめっ面で言ってドリンクを手に取って飲もうとした。
が、彼はそれを遮る。
「ああ待て待て、まだ飲むな」
「……何でさ?」
顰めっ面のまま不機嫌そうに問う優男に、笑って彼は言う。
「折角出てこれて、やっと一杯やれるんだ。アレ、しとこうぜ?」
彼もまた、ドリンクを手に取る。
「……はぁ、君はホントにそういうの好きだよね」
苦笑いしながら、優男はドリンクを顔の高さまで持ってくる。
彼も同じようにドリンクを持ち上げ――――――――――――
「俺達、ライバーとケイタの無事生還に、乾杯!!」
紙コップを軽くぶつけ合った。
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