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「そうだなぁ……スポドリが良いや。時間余っちったし、話し相手になってくれよ兄貴」
未哉は弟からの申し出に嬉しそうに頷いてリビングに歩を進める。
来生はその後ろに続いた。
リビングで寛いで世間話をしていると、未哉が確かめるように聞いてきた。
「来生、今日からだっけ?ソードアート・オンラインの正式サービスって」
「そうそう、そうなんだよ!もう待ちきれなくってさ、つい早寝早起きしちゃったぜ」
「いや、早寝早起きは悪い事じゃないから。寧ろ良い事だからさ、それを継続していこうよ?」
「えーやだよ。てか早起きはちゃんといつもしてんじゃんかよ~」
来生は読書、勉強、ゲーム等、様々な事で夜更かしするのが当たり前で、それでいて朝は普通よりも早く起きる。
普段の生活が遅寝早起きなのだ。
しかも睡眠時間が短いのに、眠たそうな様子が無く、学校で居眠りをしなかったりなのでそれほど強く注意出来ないから厄介だ。
「まあまあ未哉君、いいじゃない。来生君は普段しっかりしてるんだし」
「恵梨……いや、まあ、そうだけど……」
「恵姉ナイス!」
話に入り、未哉を諫めたのは朝食が乗った皿を運んできた女性だった。
未哉の妻、恵梨である。
煌めく様な黒髪を腰まで伸ばしていて、何も留めず流している。
非常に整った容姿とその清楚な佇まいや仕草から、『大和撫子』という言葉がピッタリ当て嵌まる美女だ。
彼女は持っていた皿をテーブルに置いていき、朝食の支度をしながら言葉を続ける。
「確かに睡眠が短いのはあまり良いじゃないけど、来生君はそれが理由で失敗した事ある?」
「…………ないです」
「でしょ?来生君にとってそれが良いならそうさせてあげましょう?」
「分かった…………そうしよう」
未哉が諦めて万々歳な来生だが、
「来生君もほどほどにしないと3時間正座よ」
「……うぇーい」
すぐに警告されてしまった。
来生は長いことじっとするのが苦痛に感じるタイプの人間だ。
動けないもどかしさと正座による足の痺れの二重の苦しみを味わうのはご免だと、来生は就寝時刻を少し早くしようと決めるのであった。
「で、そのソードアート・オンラインだっけ?面白いの?」
「俺はやった事ないから何とも……」
質問した恵梨は少ししょんぼりした義弟へと視線を移す。
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