13人が本棚に入れています
本棚に追加
来生は視線に気付くと落ち込み様は何処へいったのか、フフンと言いたそうな自慢気な顔になった。
「スッゲェ面白いよ!何てったってリアルとあんま変わんない感覚でファンタジーの世界を冒険出来るんだぜ!!」
「あれ?さっき言ってたけど、正式サービスって今日からよね?」
言わせておいて自分の過失に気付く恵梨。
だが未哉がフォローを入れる。
「詳しく言うと、今日の午後1時から。でも来生はベータテスターに選ばれたからどんなものかは一足先に体験してるんだ」
ソードアート・オンラインは世界初のVRMMOというゲームジャンルを冠したMMORPGだ。
これまで、SAOのゲームハード、『ナーヴギア』では大体一人用の、それもパズルや教育等といった正直パッとしないソフトしかなかった。
ゲームに熱心な中毒者達は生温いものでは満足できない。
そこに現れたのが幾人ものプレイヤーが同時に同じ世界を駆け巡るMMORPGのソードアート・オンラインだった。
発表された当初、各地のゲーマー達は狂喜し、その後もその熱は冷めなかった。
そんな中で募集されるベータテスト参加者。
砂漠に湧いたオアシスに群がる様に応募は殺到し、元々千人限定という狭き門が約十万人という応募者によって奇跡的な確率となってしまう。
そんな倍率百倍の中、本当に奇跡的に来生は当選したのだ。
本人はその事を知るとその場で乱舞したそうな。
当然の如く来生はベータテストにのめり込み、テスターの中ではそこそこ名が知られている程に活躍していた。
ベータテストが終わり、正式版パッケージの優先購入権を受け取った後も、学校でノート一冊まるまる使って書き込んだ詳細データを丸暗記していて、来生の中の熱は冷める事はなかった。
様々なゲームやスポーツをやってきた来生だからこそ、自らの身体で切り開いていくVRMMORPGに魅了されたのだ。
「へぇ、そうなの。なら来生君、詳しく聞かせてくれるかしら?」
「オーケイ!じゃあ先ず、ソードアート・オンライン、略してSAOっていうんだけど、そのSAOは――――――――」
時は流れ、正午の半を回った頃。
来生は自室で自身の書いた詳細データのノートを読み返していた。
暗記した内容の最終確認作業をしていると、ドアがノックされる。
「来生、入っていいか?」
「どうぞー」
入ってきた未哉は片手にサンドイッチを持っていた。
最初のコメントを投稿しよう!